3周年を迎えた川崎シニアネット
かわさきFM 平成14年7月12日(金)放送より
出演:KSN代表・渡辺正信、幹事・屋形彰男
Q(インタビュアー):岡島彰子
フライイングで立ち上げたシニアネット
- Q 川崎シニアネットが発足3年を迎えられたということですが、最初は渡辺さんがお一人で立ち上げられたのですか。
- 渡辺 はい、私一人だけなので、まあドンキホーテだったですね。
- Q たった一人でということは、何がきっかけだったのですか。
- 渡辺 私が在職中、先輩が定年で退職するとき、大抵の皆さんがパソコンを新しく買って辞められるんですね。果たしてその後、パソコンをどうするのかという疑問があったのがひとつ。川崎というところは地形が細長く、市民が川崎都民という意識が強いところなので、何とか川崎を故郷と呼べるようなところにできないかというのが、発端でした。
ちょうど在職中の今から10年ほど前、現在の経済産業省(旧通商産業省)がメロー・ソサイェティ構想というのを出したんです。これは、情報通信システムを活用して高齢者の積極的な社会参加を支援して、豊かな活力ある生活を築いていこうというものでした。これに賛同して、ちょうど私が定年に近くなったころに、各地に地域に密着したパソコンによるネットワークができてきたので、そういうものが作れないものかと、単純な発想で、あえて言えばフライイングの形でスタートしたのが実態です。
- Q そのようにして立ち上げてこの3年の間で飛躍的に会員が増えたということは、賛同する人が多かった、やはり時代のニーズに応えたということでしょうか。
- 渡辺 ニーズがあったということですねー。
- Q 今、会員は何人いらっしゃるんですか。
- 渡辺 ちょうど230名です。
- Q 始められたころは、一人、二人と入って来られたのでしょうが、そのころはどんな状況だったのですか。
- 渡辺 まったく知名度がなかったので、チラシを作って配ったりしましたが、それでは全く反応がありませんでした。
そこで川崎市内のシニアでホームページもっておられる方々にメールで、入会をお勧めして入っていただいたのが初期のころです。
ですから、よく言われるのですが、当会のメンバーのホームページを持っておられる方の比率が他と比べて非常に高いのは、私の苦し紛れの方法がそうなったわけです。
ホームページが取り持つシニアネット
- Q 屋形さんは、いつごろ入会されたのですか。
- 尾形 入会は4番目です。入会のきっかけが思い出せなかったのですが、今のお話を伺っていて、そういえば私はホームページを開いて8年ぐらいになりますから、それでお誘いがあって入ったのだと思います。
- 渡辺 屋形さんのホームページ「Akioの旅での発見」は、非常に有名です。国内だけでなく世界でも知られています。
- Q どんなホームページですか。
- 尾形 世界の観光地に行き、自分で撮った写真と感想文をつけて、必ず英語版と日本語版を同時に出しているんです。例えば昨日一日で113人見に来ています。
- Q そんなにあるんですか。トータルではどれくらいなのですか。
- 尾形 カウンターはあまり気にしていませんが、12万5千ぐらいになっていますね。
ホームページへのアクセスを増やそうとすることと、渡辺さんがKSNを作ってどうやって広めたらいいかとされたこととは同じです。
私は最初、アメリカのヤフーに登録させたいと何度も申請したのですが、駄目でした。それで、とりあえず外国の人の目に留まるものというのでカナダの方を探したらシニアネットがあったんです。そこにホームページを紹介するページがあって直ぐ登録してくれたら、あっという間にカナダの70歳以上のおばあちゃんたちが、どんどん見に来てくれて感想を送ってくれてお友達になりました。
はじめは若い人からお年寄りまでを対象にホームページを作っていたんですが、カナダのシニアネットに登録されたことで、シニアネットを知ったところに渡辺さんからお話があったので、入会したんだと思います。
初心者もパソコン教室で勉強会
- Q 屋形さんのように大変なベテランの方もいらっしゃる一方で、会員の中にはパソコンを始めたばっかりの方も多いと思うんですが。
- 渡辺 極端なケースでは、パソコンは持っているがまだメールが打てないという方も入っているんです。実際にはお子さんがメール打ってくる場合もあります。
- Q そういう方たちには勉強していただければなりませんね。何かやっていらっしゃるのですか。
- 渡辺 インターネットに関する勉強は日常メール上でもやっています。そのほかにKSPであるとか、別のパソコン教室などで集合教育、マンツーマンの相談会などを毎月実施しています。
- Q そうですか。この会そのものでもパソコン教育をやっていらっしゃるんですね。
- 尾形 会員の中にはパソコン歴の長かった方もいますので、そういう人たちが交代で講師を務めて、月に1回ぐらい希望者を集めて二つの形式で教室を開いています。
一つは講義式で30名ぐらいの人が黒板の方を向いてスライドを映したりして行うもの、最近では「PCいろは講習会」といって、本当の初歩からやっています。
もうひとつは、パソコンを実際に触ってのマンツーマンの相談会で、実際に困っていることを解決してあげるものです。これらを隔月に行っているのです。
- Q 心強いですね。
メーリングリストで情報交換
- Q ところでメーリングリストというのは、どういうものですか。
- 渡辺 電子メールの使い方なんですが、会員230名の方々のうち、ある一人の方が投稿したメールの内容を共有しようというシステムです。
具体的には、ある一人の方のメールがメーリングリストに発信されると、それは全会員に届きます。その内容に関心のある方は、それにレス(レスポンス=反答)をして意見や感想を述べたりしてどんどん話題が広がっていくのです。
- Q 一人の会員の方が投げかけた話が全員に届くのですね。
- 尾形 一人の会員の方が意見などを発表する方法としては、二通りあって、一つは掲示板に載せて皆がそれを見に行くもの、もう一つの方法がメーリングリストで一人の発表が全員に一斉に届けられるものです。
メーリングリストは掲示板のように見にいかなくても、メールとして届いているものです。
- Q 230人も会員がいらっしゃると、メールが混み合って大変でしょうね。
- 尾形 多いときは1日に40通ぐらいメールがばっと来て、対応するのが遅い方は読むのに疲れちゃって、こんなに沢山のメールが来て大変という方もいますが、私のように1日に200通ぐらい来ても平気で、返事を出すのに負担を感じていません。
掲示板に載せる方法にも二通りあって、一つは会員のパスワードでなければ見られないものと、もう一つは会員以外でも見られるもので、当会の掲示板は誰でも見られるものです。
- 渡辺 メーリングリストは、会員だけですから、これで主催者側からの連絡事項も伝えています。メーリングリストに入っていないと、会員は情報を得られないのです。
- Q 「オフ会」というのがあると聞いていますが、これは何ですか。
- 渡辺 オフ会のオフというのは、インターネットのオンラインに対してオフ、つまりインターネットから外れたということで、インターネットではお互いに顔が見えないけれど、オフはフェイス・トゥー・フェイスということです。
- Q 実際にお会いしましょうということですね。
- 渡辺 情報というのは、情けに報いること、従ってフェイス・トゥー・フェイスがなければ本当の情報は入ってこないということで、いま年に2回ほど「オフ会」というのを開催しています。今月も52名が集まりました。
続々と発足の同好会、「指止ま」会
- Q 230人という所帯では、それぞれ会員の目的が違うのではないかと思いますが。
- 尾形 「オフ会」は代表が主催して行うものですが、これとは違った活動があります。これは会員の中から自発的に、こんなことをやろうという人が発案して行うもので、私たちはこれを「この指止まれ」と言っています。
これは誰が言い出しても良いんですよ。「カメラ同好会」は、カメラの好きな人が「あやめが咲いたので撮影会に行こう」と「指止ま」宣言をして実施するものです。以前、私も参加しましたが、そうすると20人ほどの会員が集まって行くわけです。
そのほか、Mac(マック)というタイプのパソコンを持っている人が、Macだけの勉強会をやるとか、最近のパソコンにはOfficeというソフトが入っていますが、それを活用してみたいという人が、その使い方の勉強会をしようというのが「エクセル研究会」で、みなこの「指止ま」で発足したものです。
スポーツの方では「どんぐりゴロゴロ」という会があって、ゴルフをやろうという会です。腕前はゴロゴロ、つまり50,50でラウンドするという意味です。(笑い)
- Q ゴルフはよく分からないのですが、50,50というのは、ほどほどなのか、お上手ということですか。
- 尾形 まあ上手い方ですね。でもね、それより上手い人がいると除名だなどと冗談を言っていますがね。
あとは、よく喉の渇く方がいましてね、あるハナキンの夜、一杯飲んで楽しくやりましょうと「指止ま」宣言で、日時・場所を設定するのです。
- Q 喉の渇く方は多いですよね。(笑い)
- 尾形 それが開かれると、今度は二次会でカラオケの方に流れましょうという「如月会」というのもありますね。
さらに「園芸クラブ」というのがありまして、柿生から入った丘の上に新しくできた川崎田園都市病院というのがありますが、その広い屋上に患者さんたちの憩いの場としても花壇を作ろうということで、そのボランティアとして園芸に興味のある会員が花の苗や種を持ち寄って屋上庭園を作っています。
こんな活動は、別に渡辺代表や幹事が計画してやっているわけではなく、どなたか思いついた人が「この指止まれ」を言い出して、他の人が「その指止まったー」で集まるわけです。
- Q わー、楽しいですねー。
ウイルス対策、トラブル相談も
- Q 渡辺さんは最初立ち上げたときは、ここまで想像されましたか。
- 渡辺 そうですねー、ここまで行くとは思いませんでした。普通はシニアネットの立ち上げは、まず組織を作るんですね。私はそれが嫌いだったんです。皆さんの中から、いま屋形さんからお話があったように会員の方が自主的に発案して実行していただくというのが実態だし、またこれが他のシニアネットとの違いでもあり、大きな特徴でもあると思っています。
- 尾形 あと渡辺代表が一番心にかけておられるのがウイルス対策の情報です。このところウイルスの新種が出てきており、慣れてない方は被害にあったら大変ですよね。一人の会員がウイルスに感染するとそこから蔓延するという心配があります。
そこで渡辺代表の方から新しいウイルス情報とか対処方法など、必要な情報を会員全員に適宜広報されるのです。
- Q 大変にありがたいことですよね。これは渡辺さんの技術に守られているということですね。
- 渡辺 いえ、ウイルスに関しては屋形さんが一番のプロなんですよ。
- 尾形 とんでもないです。私はむしろ感染して困っているとか、新しいソフトを入れてみたんだが動かなくなってしまったというようなトラブルについて、どれどれと言って出て行くのが好きなんです。そうした困っている人のトラブルを一緒になって解決してあげるのが私の趣味なんです。
- Q 川崎シニアネットの中には、いろんな得意分野の方がいらして、その得意分野を生かして皆さん活動していらっしゃるわけですね。
230人の会員を男女比でいうと、どういうことになりますか。
- 渡辺 女性が20%でしょうか。ただね、パソコン教室など開きますと4割から5割が女性ですから、女性の方は熱心だなーと思っています。
- Q 会員になる条件というのがあるのですか。
- 渡辺 特別に条件というものはありませんが、一応、年齢は50歳以上で川崎市在住か川崎市にゆかりのある方ですね。ゆかりのある方というのは、他の市からこちらに勤務されているとか、ここの出身者であるとか言う方なんですが、最近は横浜の方が、ゆかりはないけど是非入れてほしいと言ってこられます。
鶴見区とか青葉区、都筑区などは距離的にも川崎市の方に近いわけです。また海外の方も3人ほどいらっしゃいます。
- Q それは、川崎に住んでおられて転勤とかで海外勤務になった方ですね。北海道とか沖縄に行ってしまったという方も、辞める必要はないのですね。
- 渡辺 まったく必要ありません。ご本人のご意思ですから。
他と大きく違う“川崎シニアネット”
- Q お話を伺っていて皆さん、とても有意義に会を利用されていらっしゃるように思えるのですが、会員の中で、会に入っていて何か得をしたとか、いい経験をしたとか、そういう話はありませんか。
- 尾形 中には、パソコンの具合が悪くて困っている方のところに行って、実際にパソコンに触って直してあげて喜ばれたとか。
- Q 動機は、やはりパソコンが上手く扱えるようになりたいという方が多いのですか。
- 尾形 川崎シニアネットでアンケートなどとったことはありませんが、会社が運営しているシニアネットで最近アンケートをとった結果では、大きく分けて二つあるようですね。
一つは、いわゆるメール友達がほしい、つまりメーリングリストとは別に、個人的に気のあった人同士が直接メールのやり取りをしている人も増えているのではないかということですね。
もう一つは、みんなでグループで交流できるとか、行動できるとか、みんなでやっていることが楽しいとか、大きく分けるとこの二つで、恐らく両方を兼ねている方も多いと思います。
- 渡辺 私がシニアネットを立ち上げるときに考えたのは、サラリーマンというしがらみの関係を断ち切った新しいコミュニケーションの場が必要なのではなかろうかというのもあったんです。
ですから、これまでとは全く違った形でのコミュニケーションですから、「オフ」会で初めて会っても、初めて会ったというような感じはしてないですね。
- Q そうですか。
- 尾形 会社が母体になって運営しているような大きいシニアネットとの違いを考えてみると、大きなところでは、まず会員になるときに住所や電話番号などかなりしっかりした個人情報を登録時に入れなければならない。入会したあとはハンドルネームといってニックネームで交信はできます。
これに対して川崎シニアネットは、メールアドレス、ハンドルネーム、それに生年月、そのほか趣味などを入れてもらえば入会できます。
私も去年までは勤めていたため、やはり会社に迷惑をかけてはいけないとうことから本名を明かさないでハンドルネームを使うわけですね。が、会社を離れるとそんな心配もないので、特に男性の場合は本名に切り替えます。
さらに「この指止まれ」で顔を合わせますと、「どこに住んでるの」とか、電話番号を知らせあったり車で送ったりと、だんだん変わっていくわけです。
ですから、一番初めのバリアとして本名などを登録しなければならないとなると、抵抗のある方も多いですよね。そこが大きな違いだと思いますね。
- 渡辺 仲間作りと言っても、メインはメーリングリストとか「オフ」会などですが、実際には個人対個人のお付き合いをされている方がずい分多いと思います。それはそれで大変結構なことと、私は思っています。
- 尾形 大きな組織のシニアネットが個人情報をしっかり取っておくのは、会員同士で何かトラブルがあったときに、ある程度の処置が取れるようにするためと表向きは言っていますが、何かそのうち通販に利用されるのではないかなどと、企業がかかわっていると感じるんですよね。
- Q 今後、この「川崎シニアネット」を、どのようにしていくお考えですか。
- 渡辺 難しいご質問ですが、会員数が想像以上のピッチで増えてきたというのが実態で、そのため未整備の部分が大分出てきております。
そこで、受け入れ側の態勢というものの強化を図りたいということで、今月から10人の方々と幹事会を作りましたので、そこで基本的な方向と問題の解決をしていきたいと思っています。
また現在行われている活動でも、なかなか及第点をつけられるところまでいっていないので、レベルアップを図っていかなければならないというのが、当面の目標です。
あとは、会員も当会のレベルに見合った形で増えていけばいいなと思っています。
- Q まあそれでも、この放送をお聞きになって、ぜひ入りたいと思っておられる方もあると思いますが、入りたいという方はどうすればいいですか。
- 尾形 ホームページにありますよね。
- 渡辺 はい、ホームページ http://kawasaki-senior.net/ に入会案内がありますので、そこに書いてある必要事項を書いて私宛にメールで送っていただければ、入会を受け付け後ウエルカムメッセージをお送りいたします。
- Q きょうは、ありがとうございました。